拝啓　門上様
私はあなたの領域を侵してしまいました。
先週、南船場の「遊山」で、めくるめくビフカツを食べてしまったのです。
加賀屋の近江牛シャトーブリアンを使ったビフカツです。
一口齧った瞬間、目眩が起こりました。
パンに歯が入り、肉にめり込んだ瞬間、肉の香りが爆発して、鼻が笑いました。
シャトーブリアンだから柔らかい。でもただ柔らかいだけでなく、しっとりと歯に吸い付いてくるいやらしさがあって、反面気高くもある。
肉汁が一気に溢れるのではなく、歯が入っていくその１ミリ以下の感覚に合わせて、少ずつ甘い滋味が攻めてくるのです。
こんな品格と逞しさを持った肉なのに、まあ気軽に食べてよと、パンがさりげなく包んでいる。
高価だけど、それを感じさせない気取りのなさがあって、もうどうにもこうにも陥落してしまいました。
関西のカツサンドの底力に震えた夜でした。
これでは僕も、最後に食べたいものは？　と聞かれたら、
「カツサンド」といってしまうかもしれません。